2009年4月16日

ただ、悪いことだけではなかった

復帰戦に満塁本塁打で偉業を達成してみせた。

 本来は大リーグ開幕直後に並ぶはずだった。ところがWBCの激闘からか、胃潰瘍(かいよう)になり、メジャー9年目で初めて欠場が続いた。

 ただ、悪いことだけではなかった。「健康のありがたさを説く人がいるが、その気持ちがわかった」。野球が出来る喜びを改めてかみしめて、新たな気持ちで記録に挑むことが出来た。

 イチローの魅力とは何か。それは、どんな環境にも即応しながら、「進化」し続けてきたことにある。

 昭和の一流打者は自分の理想型を持ち、そのためにフォームを固めることに集中した。王貞治氏の「一本足打法」が代表だが、張本氏の「広角打法」も同様だった。その姿は、日本の伝統技術を守る職人の姿と二重写しになる。

 平成に入って登場したイチローも、軸足から前足に重心を移して打つ「振り子打法」という独特な打ち方で頭角を現した。しかしその後、スタンスをやや狭めたり、重心の移動を小さくするなど、フォームは微妙ながら、次々と変わった。メジャーでは立てていたバットを寝かせるなど修正を重ねた。

 「バットが届く範囲の球を、すべて安打したい」。その理想に近づくために、35歳を超えても柔軟に対応する様子は、世界のニーズに応じて、最先端技術で世界を引っ張った日本のメーカーを連想させる。

 ヒーローは社会を反映する。イチローは時代のシンボルとなっ